投資をする上で無視できないのが、景気サイクルです。
不動産にも景気サイクルはあるのですが、他の経済活動とは少し違うサイクルになっているとも言われています。
では実際の不動産投資における景気サイクルとは、どのようになっているのでしょうか?
新型コロナウイルスの感染拡大の中、2021年これだけは知っておきたい景気サイクルについて詳しく解説していきます。
この記事は約5分で読めます。
景気サイクルとは
経済の状況を表す景気は、常に変動しています。
しかし、それはランダムに変動しているわけではありません。
長期的に見ると、上昇と下降を繰り返しながら循環するように動いているのです。
景気というのは、永遠に上がり続けることも下がり続けることもありません。
上昇しているといつかは下がり始め、下降していてもいずれは上昇するのです。
この様子を、景気サイクル、もしくは景気循環といいます。
これを踏まえた上で、過去に起こった出来事は何度も繰り返されるという考え方もあります。
好景気はいつまでも続かないというのは、日本のバブル崩壊で明らかになりました。
しかし、不況も永遠に続くわけではないのです。
サイクルなので、いきなり変化することもありません。
短期的に見れば上昇と下降を繰り返しながら、少しずつどちらかに偏って変化しています。
このような景気サイクルに沿って投資する、という投資方法もあります。
不景気で値が下がっている時に買って、好景気になって値上がりしたら売るという方法です。
長期的な投資であれば、有効でしょう。
不動産の景気サイクルは2つある
通常、景気サイクルにはいくつかの種類があります。
その違いは、周期の長さです。
代表的なものとして、景気サイクルには以下の4つが挙げられます。
まず、起因となるのが在庫変動であるキッチン・サイクルというのがあり、周期は約40カ月です。
設備投資の変化によるジュグラー・サイクルは、約10年周期となっています。
建設需要を起因としているクズネッツ・サイクルは、約20年周期で変動します。
そして、周期が50年と最も長いコンドラチェフ・サイクルは、技術革新によって変動します。
新しく生み出された技術も50年が経過したころには一般化して下火になりますが、その頃には再び新しい技術が生まれてまた景気が上昇していくのです。
実際に、日本のGDPと設備投資の複合循環を分析したものがあるのですが、それの分析ではキッチン・サイクルが4.9年、ジュグラー・サイクルが9.6年、クズネッツ・サイクルが25.6年、ゴンドラチェフ・サイクルが56.0年で起こっていました。
これが、通常の景気サイクルです。
しかし、不動産の景気サイクルは少し違うとされています。
不動産の場合は、主に2つの景気サイクルがあるのです。
不動産の景気サイクルは、主に5年周期と10年周期のものがあります。
10年周期の景気サイクルは、経済的なイベントやマクロ経済に起因するものです。
では、5年周期の景気サイクルは何に起因するのでしょうか?
それは、人間の記憶です。
人間の記憶は、常に刷新されています。
しかし、過去のイメージなどが消え去って新しいイメージに入れ替わるには、およそ5年かかるのです。
不動産の景気サイクルは、この2つがあると考えられています。
しかし、不動産市場を見る場合はこの2つだけを気にしていればいいという訳ではありません。
不動産に重要な3つのサイクル
不動産を見る場合には、不動産市場のサイクルを見るのは当然です。
しかし、それ以外にも重要なサイクルが2つあるのです。
そのサイクルも、見る必要があるのです。
重要なサイクルの一つ目は、マクロ経済のサイクルです。
様々な景気サイクルがある中で、マクロ経済のサイクルは市場に対する影響力が最も大きいものです。
このサイクルは、市場全体に影響します。
当然、不動産市場も例外ではありません。
全体の景気が悪くなれば不動産市場も景気が落ち込み、景気が良くなれば不動産も活発に売買されるようになるのです。
日本では、昔から不動産、特に土地を大切にする考え方があります。
現金や絵画、宝石といった動産にあたる財産は火事で燃えてしまうなど何かあれば失われますが、土地は失われることがまずないからです。
そのため、景気が上向きになって暮らし向きにも余裕が出てくると、土地を買おう、不動産に投資しようと考える人が増えてくるのです。
そして、それは景気が下向きになってもしばらくは続きます。
景気が下向きになると、今度は金利が下がってきます。
しかし、その頃はまだ景気が良かったころの記憶が残っているので、金利が下がった今がチャンスと考えて、不動産に投資される額が増えてくるのです。
その後、景気が悪化していくにつれて不動産投資は減少していきます。
そうして、再び景気が上向きになると、また不動産投資が徐々に活発な動きとなっていくのです。
2つ目の重要なサイクルは、資本市場のサイクルです。
資本市場は、長期金融市場の別名です。
1年以上かけてやり取りをする、長期資金を扱う市場のことをいいます。
これを細かく分けると、株式市場や債券市場、金融機関の長期貸付市場な度に分けられます。
大きく分けた場合は、証券市場と長期貸付市場となります。
そのうち、資本市場は主に証券市場を指しています。
株式市場では、会社が株を発行して投資家がそれを買うことで、資金を調達できます。
会社はその資金で事業を拡大していくのですが、その際に不動産を購入することはよくあります。
支社を出すにも、工場を増やすにも土地は必要です。
また、長期貸付市場も無関係ではありません。
この市場の動きで、金利は変動していくからです。
金利が下がれば土地に投資する資金だけではなく、会社の事業資金の調達もしやすくなります。
不動産市場は、この2つの市場の影響を強く受けることになるのです。
そのため、不動産の景気サイクルを見るのなら、この2つと併せて見ていく必要があるのです。
不動産の買い時は?
不動産の景気サイクルとは、どのようなものかを解説しました。
では、その景気サイクルを実際に不動産の売買で活用するには、どういった点に注目すればいいのでしょうか?
まず、景気サイクルから見る不動産の買い時について説明します。
もちろん、最も適しているのは底値で売られている時です。
しかし、底というのは景気が上向きになってからでなければ判断はできません。
そこで、他の2つの景気サイクルに注目するのです。
まず注目するべきは資本市場サイクル、その中でも株式市場のサイクルに注目しましょう。
景気が上向きになってしばらく経つと、景気が過熱しないように政策金利が引き上げられます。
そうなると、株式市場に投資されている資金も減ってしまい、株価は下落していくのです。
株価が下落すると、企業の資金繰りも悪化します。
そして、市場に流通するお金が減ってしまうことで消費需要も減退してしまい、景気も悪化していきます。
消費が減退すると、企業の業績も悪化してきます。それにより、消費者は企業に対して信用不安が生じるようになります。
その結果、株価はますます下がるという悪循環に陥ることとなります。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けている今、まさにその状態と言えるでしょう。
不動産を買うべきなのは、このタイミングです。
企業は資金繰りが悪化して、政策金利も上がっているため設備投資もできなくなります。
そのため、不動産の需要も下がり、価格も下落していくのです。
底値については、確実に判断することはできません。
そのため、自分で判断するしかないのですが、なるべく失敗しない方法もあります。
それは、上がり始めを狙うことです。
不動産の価格は、いきなり2倍になるわけではありません。
1000万円から2000万円になるまでには、途中で1100万円、1200万円と少しずつ上がっていくのです。
1000万円のときに買う判断ができなかったとしても、1200万円のときなら分かりやすいでしょう。
そのタイミングで不動産を買うことで、最大限ではないにしても、大きな利益を狙うことができるのです。
ただし、不動産というのは一律で価格が変動するわけではありません。
Aの不動産の価格が上がったとしても、Bも上がるとは限らないのです。
極端な話では、他の不動産が下落していく中で一部だけ価格が上がることもあるのです。
そのため、1つの不動産の価格の動きだけで判断しないようにしましょう。
注目している不動産と、もう一つ属性が異なる不動産を両方ともチェックしてください。
できれば、もっと多くの不動産をチェックした方がいいでしょう。
そして、不動産の価格変動と併せてマクロ経済サイクルと、資本市場サイクルもチェックしましょう。
確実性を期すのであれば、そのすべてが上向きになったタイミングで不動産を買うことをおすすめします。
不動産の売り時について
不動産の買い時は、なるべく価格が底をついた時を見極めるべきですが、売り時はその反対です。
なるべく、ピークを迎えた時に売るようにしましょう。
しかし、そこと同じくピークも、過ぎてみなければ判断ができません。
そこで、やはり他の2つのサイクルに注目しながら判断するべきでしょう。
このときに注目するのは、政策金利の引き下げが合った時です。
政策金利が引き下げられると、株式市場へと投資される資金が増えます。
そして、株価は上昇していくのです。
また、企業も株式市場だけではなく、金融機関からの融資も受けやすくなります。
企業が積極的に設備投資できるようになると、業績も徐々に上向きになっていきます。
その結果、株価もさらに上昇していくのです、
そうして、株による利益を得られる人が増えて、消費需要も増加していくのです。
このときに、不動産の価格もピークを迎えます。
そのタイミングで売るべきですが、ピークが分からないた目、そうタイミングよく売却できるとは限りません。
そこで、売却のタイミングとしておすすめなのが、不動産の価値が下がり始めた頃です。
その頃には、景気もピークを迎えて徐々に後退する気配が出てきます。
政策金利の引き上げが行われる頃になるともう遅いので、その前に売却してしまいましょう。
不動産投資には出口戦略が必要
不動産投資をする人は、主に家賃収入を目的としています。
株式投資では高配当銘柄が人気なように、投資家はインカムゲインを重視する事が少なくありません。
家賃収入も、不動産投資におけるインカムゲインです。
しかし、不動産投資ではいつまでもそのインカムゲインだけを狙っているわけにはいきません。
何故なら、不動産は株と違って、徐々に劣化していくからです。
単に土地だけを貸しているのなら、その心配はないでしょう。
しかし、アパートやマンションに投資して家賃収入を狙うのであれば、建物の劣化についても無視できないのです。
アパートも、築10年のときと築20年のときでは、同じ家賃で貸し出すことは難しいでしょう。
築40年にもなると、かなり家賃も下がってしまいます。
また、建物も年月が経つと、様々な所が傷んできます。
その補修も必要となるので、家賃は同じでも経費が増えてしまい、収入はやはり下がってしまいます。
その上、古いアパートになると敬遠する人もいるので、空き室も増えてきます。
そうなると、家賃収入は益々少なくなってしまいます。
最初は良くても、いずれ赤字となるケースがほとんどなのです。
そうなる前に、不動産を売却することも考えておかなくてはいけないのです。
不動産投資において、購入して人に貸し、家賃収入を得てそこから経費を支払う、という一連の流れがありますが、売却というのはその流れから脱出できる出口となるのです。
ただし、いつでも売却していいという訳ではありません。
簡単に言えば、不動産を買った時の価格にこれまでかかった経費をプラスして、そこから今まで得た家賃と売却時の価格を差し引いて、収入の方が上回っていなければ損をすることになります。
そうならないように、不動産投資における出口戦略を考えながら投資をするようにしましょう。
まとめ
不動産の景気サイクルは、シンプルなものではありません。
不動産の景気サイクル自体も2つあり、その上で他にも2つのサイクルが絡み合っているのです。
そのため、不動産の景気サイクルを見極めるのであれば、1つのサイクルだけではなくいくつものサイクルをチェックしましょう。
そうすれば、売買に最適なタイミングもつかみやすくなるでしょう。