投資用不動産を経営するにあたって、オーナーが知っておきたい法律の1つに“借地借家法”が挙げられます。
また、借地借家法には“正当事由”という項目が定められていて、これはたびたびオーナー(貸主)と借主の間、あるいはサブリース契約などにおいて問題になります。
詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
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借地借家法の概要
土地の賃貸権等の存続期間、建物の賃貸借契約の更新とその効力などを定めた法律を“借地借家法”といいます。
以前は、借地法や借家法が施行されていましたが、1991年にこれらの法律が廃止されて以降は、借地借家法が新法として適用されるようになっています。
貸主には少し不利な内容の法律といえますが、これは借地借家法が借主の保護を目的に作られた法律であるため、致し方ありません。
借地借家法の“正当事由”について
借地借家法の中でも、“正当事由”は非常に重要な項目です。
これは、貸主が賃貸借契約の解約を申し入れるために必要な条件をいいます。
借主の場合、期間内解約条項があれば、特別な理由は必要なく一方的に契約を解除できますが、貸主の場合は、正当事由がなければ、一方的に解約することはできません。
つまり、借地借家法における正当事由は、借主有利、貸主不利の象徴的なルールだと言えるでしょう。
では、正当事由には、一体どのようなことが当てはまるのでしょうか?
具体的には以下の通りです。
- 貸主自身が居住する必要がある
- 貸主の親族または従業員等が使用する必要がある
- やむを得ず生計のために売却する必要がある
- 貸主が立ち退き料を提供したとき など
なお、正当事由が認められるかどうかは、貸主だけでなく、借主の事情も考慮されます。
このとき、貸主に借主を上回るほど逼迫した事情がない限り、正当事由は認められません。
サブリースについて
サブリースは、たびたび投資用不動産の経営において、オーナーが用いる方法の1つです。
具体的には、投資用不動産をサブリース業者に貸し出し、オーナーの代わりに入居者募集、入居者からの賃料の回収などを行ってもらうサービスをいいます。
オーナーは、管理会社に依頼する場合と同じように、不動産投資における管理業務をサブリース業者に一任することができます。
また、投資用不動産における入居者の有無に関わらず、サブリース会社から保証賃料を受け取れるため、空室リスクを負う必要がありません。
もちろん、手数料が発生するため、賃料収入を最大化することはできませんが、常に安定した賃料を得られるという意味では、魅力を感じるオーナーも少なくないでしょう。
借地借家法の正当事由とサブリースの関係
サブリース契約では、サブリース業者に対し、オーナーが投資用不動産を一棟貸しします。
つまり、オーナーが貸主、サブリース業者が借主になるということです。
また、サブリース契約には、通常の賃貸借契約と同じように契約期間が存在し、満了後に更新すれば、当然オーナーとサブリース業者の関係性は継続します。
しかし、オーナーの中には、「サブリースをしてみたけど、あまり効果がない」「サブリース業者が信頼できない」といった理由で、契約満了時に更新を拒絶しようと考える方もいます。
ただ、オーナーが契約を解除したくても、サブリース業者がそれに合意しない場合、オーナーは正当事由を用意しなければいけません。
なぜなら、借地借家法で守られるのは、借主であるサブリース業者であるからです。
オーナーは貸主であるため、借地借家法の適用範囲内では、どうしても立場が弱くなってしまいます。
解約される可能性は高いため、注意が必要
サブリース契約の貸主であるオーナーは、サブリース業者が信頼できなくなったり、賃料の減額交渉をされたりしたからといって、正当事由なしで契約を解除することはできません。
一方で、借主であるサブリース業者からは、簡単に契約を解除することができます。
借主側は、解約時に正当事由を用意する必要がないからです。
また、これにより投資用不動産のオーナーは、サブリース業者が中途解約することで、空室だらけの物件のみが残ってしまい、借入金を返済できなくなるといった状況にもなりかねません。
高額な違約金が発生する可能性も
仮に、オーナーがサブリース契約を解約できたとしても、解約時の違約金が設定されている場合があります。
また、違約金の金額は、サブリース業者の裁量で決定されるため、オーナーにとって非常に高額になることもあります。
つまり、契約内容をしっかり確認していなければ、違約金が支払えず、サブリース契約を解約したくてもできないという状況にもなりかねないということです。
サブリース契約におけるオーナーの対策について
前述の通り、投資用不動産のオーナーは、サブリース業者との契約期間中に賃料の減額を求められたり、中途解約を請求されたりする可能性があります。
もっと言えば、サブリース業者が倒産してしまう可能性も否定できません。
ただ、サブリース契約が“定期建物賃貸借契約”である場合、“賃料は減額できない”との特約があれば、その取り決めに従うことになります。
また、定期建物賃貸借契約は、一定期間で契約が終了するものです。
言い換えれば、契約の更新がないことを特約した賃貸借契約であるため、期間満了時、サブリース業者が解約に合意してくれないといったことも起こりません。
もちろん、定期建物賃貸借契約を締結する場合、貸主はあらかじめその旨を書面で借主に説明しなければいけません。
よって、サブリース業者が合意しなければ、そもそもサブリース契約を結ぶこともできませんが、これに合意してくれるサブリース業者がいれば、オーナーのリスクはかなり軽減されるでしょう。
今回の記事のポイントを整理!
今回の記事のポイントは以下になります。
- 建物の賃貸借契約の更新などを定めた法律が“借地借家法”
- 借地借家法の正当事由がなければ、借主は一方的に契約を解約できない
- サブリース契約をオーナーが解約する際も、正当事由がなければいけない
- 業者側からは中途解約されるリスクがある
- 定期建物賃貸借契約を結べばサブリース契約のトラブル対策になる
以上のポイントはしっかりと頭にインプットしておきましょう!