不動産投資は、個人投資家としてだけでなく、株式会社や合同会社などを設立し、法人名義で行うこともできます。
法人名義にすることで、経費計上の範囲が広がったり、相続・贈与対策を取ったりすることが可能です。
今回は、法人名義で不動産投資をする際の流れについて解説します。
この記事は約5分で読めます。
法人名義で不動産投資をする際の一般的な流れ
法人名義にすることで、さまざまな恩恵が受けられることは理解していても、どのような手続きが必要なのかについては把握しきれていないという方もいるでしょう。
法人化は、一般的に以下のような流れで行われます。
- 法人の基本項目を設定する
- 印鑑を作成する
- 定款を作成する
- 定款の認証手続きをする
- 資本金を振り込む
- 登記手続きをする
- その他の届出をする
法人の基本項目を設定する
法人を設立するために、まずは基本項目をいくつか決定します。
具体的には、以下の項目です。
・商号
法人の名称を指します。
・本店所在地
基本的には、自宅の住所を記載します。
・資本金
法人設立における運転資金の基礎となる金額を指します。
法人化に必要な税金、定款の認証、その他の諸経費などをベースに算出し、必要な金額を設定するのが一般的です。
不動産投資の法人化においては、10万円など少額で設定するケースが多いです。
・発起人
法人の設立を企画し、中心となって手続きをする人物を指します。
発起人は1名以上で、必ず1円以上は出資する必要があります。
・役員
不動産投資の法人化においては、主に投資家の方自身や配偶者が役員を務めます。
・事業内容
事業内容は“不動産賃貸業”となります。
・事業年度
1年を超えなければ、何ヶ月でも自由に決めて良いことになっています。
一般的には、“4月1日から3月31日まで”、“1月1日から12月31日まで”と記載されます。
印鑑を作成する
不動産投資用の法人を設立するためには、以下の3つの印鑑が必要になります。
- 代表者印
- 銀行印
- 角印
代表者印は法務局、銀行印は金融機関への届出に必要です。
ちなみに角印とは、押印した印影の形が四角の印鑑を指します。
法人の商号が彫られることから、“社印”とも呼ばれています。
定款を作成する
“定款”とは、法人のルールを記載したものであり、書面あるいはPDF形式で作成します。
不動産投資を行う場合、法人の定款における“目的”の部分には、以下のような記載をしなければいけません。
- 不動産の賃貸および所有、管理、利用
- 前各号に付帯関連する一切の事業
目的の部分に、不動産売買や不動産コンサルティングなど、将来実施したいことを記載しておいた方が良いという方もいますが、この考えは間違っています。
融資を行う金融機関は、あくまで不動産賃貸に特化した法人に対して融資を行うため、目的は不動産賃貸業に絞らなければいけません。
定款の認証手続きをする
株式会社の設立を選択する場合、公証役場に作成した定款を持ち込み、公証人の認証を受けなければいけません。
本店所在地のある都道府県の公証役場であれば、どこでも手続きができます。
ただし、定款の内容に不備が見つかった場合、一度持ち帰って修正しなければいけないため、事前に公証人に確認してもらうことをおすすめします。
ちなみに、設立するのが合同会社の場合、認証手続きをする必要はありません。
資本金を振り込む
発起人の個人口座に、あらかじめ設定した資本金を振り込みます。
このとき、最初から個人口座に出資金と同額かそれ以上の金額が入っていたとしても、改めて振り込みの手続きをする必要があるため、覚えておきましょう。
振り込みが完了したら、振込証明書を作成します。
こちらは、登記申請を行う際、通帳のコピーとあわせて提出するため、紛失しないように注意しましょう。
登記手続きをする
登記申請に必要な書類は、主に以下の通りです。
- 定款
- 登記申請書
- 就任承諾書
- 代表者の印鑑証明書
- 登録免許税分の収入印紙を貼付した台紙
- 振込証明書
- 通帳のコピー
- 印鑑届出書 など
必要書類に関しては、株式会社か合同会社かによって少し変わってくるため、書類に漏れがないかどうかは慎重にチェックしてください。
また、登記申請は、本店所在地を管轄する法務局で実施します。
窓口、郵送、オンラインのいずれかで手続きが可能であり、提出書類に不備がなければ、通常1週間~10日程度で完了します。
ちなみに、登記申請日は法人設立日でもあるため、希望の設立日がある場合は、その日に間に合うよう早めに準備しておきましょう。
その他の届出をする
登記が完了したら、法人口座開設、税務署への届出などを行います。
このとき、登記事項証明書が必要になるため、早めに法務局で取得しておきましょう。
これらの手続きがすべて完了したら、晴れて法人名義での不動産投資をスタートさせることができます。
法人名義で不動産投資をする際の注意点
普段会社勤めをしている方、いわゆる兼業投資家の方が、法人名義で不動産投資をする場合は、副業規定に注意しなければいけません。
企業にもよりますが、不動産投資による収益は不労所得であるため、副業とはみなされないことが多いです。
しかし、会社を設立し、役員報酬を得る形式になると、投資の範囲を超え、事業とみなされることが一般的であり、この場合には最悪勤務先を解雇となる可能性もあります。
よって、法人名義にする前に、副業規定の取り扱いについて確認しておきましょう。
また、法人名義で不動産投資をする場合、現在個人が所有している投資用不動産を、設立した法人に売却するという形で、所有権を移転する方法が取られます。
このとき、売却価格が簿価金額を上回っていると、譲渡税の対象になるため、こちらに関しても注意しましょう。
特に、減価償却を最大で行っていた場合、簿価金額は下がっているため、気を付けなければいけません。
今回の記事のポイントを整理!
今回の記事のポイントは以下になります。
- 法人名義で不動産投資をするには、まず基本項目や印鑑、定款の作成を行う
- 株式会社を設立する場合には、定款の認証手続きが必要
- 登記申請は、本店所在地を管轄する法務局で実施する
- 兼業投資家の方は、法人設立により、勤務先の副業規定に引っ掛かるおそれがある
以上のポイントはしっかりと頭にインプットしておきましょう!