現行の“借地借家法”は、以前“借地法”、“借家法”という2つの法律に分かれていました。
また、借地法・借家法は、すでに廃止されていることから“旧法”と呼ばれ、一方で新たに施行された借地借家法は“新法”と呼ばれています。
今回は、旧法と新法の異なる点について説したいと思います。
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旧法について
まず、旧法と呼ばれる借地法、借家法の概要について解説します。
借地法は、1921年に施行されたもので、“建物の所有を目的とする土地の契約期間”などについて定められています。
また、借家法は、借地法と同時に民法の特別法として制定されたもので、制定当初は建物賃貸借に引き渡しによる対抗力を認めることと、解約期間を6ヶ月と法定することに主眼を置いたものでした。
新法について
新法と呼ばれる借地借家法は、1992年、旧法が廃止されるとともに施行された法律です。
この法律の目的は賃借人の保護であり、基本的には旧法の精神を継承しつつ、時代への適応を図っています。
つまり、新法の施行後も、旧法が意味を失ったわけではないということです。
また、借地借家法から新設された内容も多く、賃貸市場の活性化を図る役割を持った法律でもあります。
旧法と新法の違いを知っておくべき理由
不動産投資を行う方は、必ず旧法と新法の違いを把握しておくべきです。
特に、これまで不動産投資をしてきた経験があり、旧法に馴染みがあるという方は、新法のルールを頭に叩き込まなければいけません。
後述しますが、新法である借地借家法では、旧法にはなかった“正当事由”に関する新たな項目が追加されています。
もし、これを知らずに不動産投資を行い、サブリース契約などを結んでしまうと、後々サブリース業者の契約解除ができないなど、大きな問題に発展してしまう可能性があるため、注意が必要です。
旧法と新法の異なる点について
では、旧法である借地法・借家法と、新法である借地借家法には、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
主な違いとしては、以下の点が挙げられます。
- 契約期間
- 正当事由
- 建物の朽廃、滅失
契約期間
旧法と新法の主な違いには、まず“契約期間”が挙げられます。
旧法の場合、鉄筋コンクリート等の丈夫な建物は30年以上、耐久性に難がある木造などの建物は20年以上の契約期間を設定する必要がありました。
また、契約更新時も、同様の期間を設定することが義務付けられています。
一方、新法では、旧法における構造による契約期間の違いが撤廃されています。
構造に関係なく、新規契約の場合は30年以上、1回目の更新時には20年以上、2回目の更新時には10年以上の契約期間を設定するというのが、借地借家法のルールです。
正当事由
旧法と新法の違いとしては、“正当事由”に関することも挙げられます。
旧法にも、“解約をする場合には正当な事由が必要”というルールは存在しましたが、この正当事由が何を指すのかについては、明確に規定されていませんでした。
一方、新法である借地借家法では、正当事由に関する明確な規定が設けられています。
また、立退料に関する項目も追加され、妥当な金額の立退料を提示すれば、原則貸主は借主の契約解除に踏み切れるようになりました。
建物の朽廃、滅失
“朽廃”とは、建物が時間の経過により、社会的経済価値をなくすことをいいます。
具体的には、手で押して倒れるくらいが、朽廃の目安とも言われています。
一方、“滅失”とは、解体や火災による焼失などの理由で、建物が存在しなくなった場合を指します。
旧法では、期間の定めがない契約の間に建物が朽廃したとき、原則賃貸借契約は終了し、滅失の場合は、原則貸主が契約解除することはできないとされていました。
これに対し、新法は、建物の朽廃に関する記載が削除されています。
つまり、朽廃と滅失が同様のものと扱われるようになったということです。
サブリース契約時は借地借家法の観点からおすすめしない
先ほども少し触れましたが、旧法である借地法・借地法と、新法である借地借家法の違いを正しく理解しておかなければ、サブリース契約においてトラブルに巻き込まれやすくなります。
なぜなら、サブリース契約をする場合、借地借家法上の貸主は投資用不動産のオーナー、借主はサブリース業者になるからです。
つまり、この契約では弱い立場とされるサブリース業者(入居者)が借地借家法により保護される傾向にあるため、新法を理解していないオーナーは損をする可能性が高いということです。
具体的には、簡単に賃貸借契約を解除できなかったり、賃料の減額請求をされたりといった理由で、オーナーは損をすることがあります。
一番の対策はサブリース契約をしないこと
借地借家法について熟知していても、サブリース契約で前述のようなトラブルが起こる可能性はあります。
つまり、サブリース契約で後悔しないための一番の対策は、サブリース契約をしないことだということです。
空室対策として認識されているサブリースですが、契約するだけで空室が埋まるわけではありません。
また、契約を結ぶことで賃料収入は減ってしまいますし、業者からの入金が遅れる可能性も当然あります。
これなら、ある程度自己資金に貯えを持った状態で不動産投資を始める方が、よっぽどしっかりした空室対策だと言えます。
もちろん、先ほどから何度も言うように、サブリース業者自体と契約内容や更新、解除などで揉めることも考えられます。
オーナーは入居者や管理会社とも付き合っていかなければいけないため、サブリース業者とのトラブルが起こると、計り知れない身体的、精神的負担を味わうことになります。
サブリース契約を検討している投資用不動産のオーナーは、果たしてこれだけ多くのリスクを背負ってまで契約すべきなのかを、もう一度じっくり考えてみましょう。
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今回の記事のポイントを整理!
今回の記事のポイントは以下になります。
- 廃止になった借家法・借家法は“旧法”、現行の借地借家法は“新法”と呼ばれる
- 新法では、旧法にあった建物の構造による契約期間が撤廃された
- 旧法と比べて、新法は契約解除の際の正当事由に関する規定が明確になった
- 新法では、建物の朽廃と滅失が同様に扱われ、適応されるルールも統一されている
以上のポイントはしっかりと頭にインプットしておきましょう!