不動産を購入する際は、ローンを利用する人がほとんどです。
しかし、不動産を購入するためのローンには、2つの選択肢があります。
この2つには、大きな違いがあるのですが、ご存じでしょうか?
2つのローンがどう違うのか、解説します。
この記事は約5分で読めます。
2つのローンはどう違う?
どのようなローンでも、銀行が融資をする際にはその判断基準となる5つの原則があります。
これを、融資の5原則といいます。
これは、下記の5つから成り立つものです。
- 公共性の原則
- 安全性の原則
- 収益性の原則
- 流動性の原則
- 成長性の原則
この5つの面から、2つのローンの違いについて考えてみましょう。
公共性の原則
銀行の融資の判断基準として、社会の発展に役立つかどうかという考え方があります。
用途が経済活動を著しく妨げるものや、反社会的な行為の場合は、融資をしないという考え方です。
不動産投資は、社会に対して賃貸で利用できる不動産を提供するという行為です。
社会の発展に寄与することとみなされるので、公共性は問題ありません。
ただし、その結果不動産価格が高騰する可能性や、供給過多になる可能性など、経済活動の妨げになる可能性は考えられます。
そのため、通常なら問題なく融資できますが、問題が生じてきた時は融資審査が通りにくくなってしまいます。
以前、このような状態で不正に融資していたケースもあるので、審査が厳しくなることも考えられるでしょう。
一方、住宅ローンの場合は自分が住むための住居を確保して、財産を形成することを目的としています。
その点も、公共性として問題はありません。
不動産価格が高騰しても、住宅ローンの場合は需要が増えているだけとみなされ、融資を受けた側も返済が滞らないように努力するため、経済活動の発展を促すものと考えられます。
そのため、極端に審査が厳しくなることもまずないでしょう。
安全性の原則
融資をした以上、銀行は確実にそれを回収しなくてはいけません。
そのため、融資の審査では返済能力について念入りに確認されます。
このとき、2つのローンの違いとして大きいのが、返済の原資です。
不動産投資用ローンでは、主に購入した物件を賃貸物件として提供します。
そのため、事業性が審査されます。
賃料や空室率、諸経費などをどう見積もるかによって、その想定が甘いものではないか判断されるのです。
この時、すでにほかの不動産で良好な結果を出していれば、審査もスムーズに進むでしょう。
実績がある場合は、そちらも判断基準として考慮されます。
住宅ローンは、基本的に給与などの収入から返済されます。
そのため、収入に対して返済金額が占める割合、返済比率が重視されます。
一般的には、35%が上限となっています。
それを超えると、途中で返済が滞る可能性が高くなるのです。
そのため、収入が一定ではないことも多い自営業より、収入が安定している正社員のほうが、審査で有利になりやすいでしょう。
万が一、返済できないような状態になったときに備えて、担保や連帯保証人などを付けます。
それにより、返済ができなくなる事態を極力防いで安全性を高めるのです。
収益性の原則
融資をする以上、それによって収益を挙げなくてはいけません。
この場合は、銀行が得られる利益のことをいいます。
その利益は、金利という形で得ることになります。
不動産投資用ローンは、先ほどもいったように賃貸の収益から返済されます。
そのため、事業の安全性としては低く見積もられるので、不確定要素に対して上乗せされるリスクプレミアムが加わり、金利は高くなります。
それに対して、住宅ローンの場合は給与を主とした収入から返済されます。
そのため、収入は定年を迎えるまで途切れないことを前提として考えられます。
安定しているとみなされるので、金利は低く抑えることができるのです。
もし、返済について不安要素が多い状態で融資を受けようとする場合、金利が上限まで高くなる可能性はあります。
どちらの場合も、金利には幅が設けられていますが、それは実績や将来性、安定性などを考慮して決定されるのです。
流動性の原則
銀行は、融資と回収を繰り返すことで資金を流動させ、そこから金利という収入を得ていきます。
しかし、銀行預金が引き出されるとき、資金が足りないということにならないように配慮しなくてはいけないので、融資期間は長期よりも短期のほうが望ましくなります。
不動産投資用ローンと住宅ローンのどちらも、基本的に融資期間は長期になるでしょう。
もし、それでは融資を受けるのが難しいようなら、期間をなるべく短期になるよう申し込んでみると、審査に通りやすいかもしれません。
成長性の原則
銀行が融資をして、それによって融資先が成長し、さらに取引拡大できることを目指すのが原則となっています。
ただし、これは法人に対する融資の原則であり、個人を対象とした融資ではあまり関係ありません。
不動産投資用ローンなら、多少の関係はあるでしょう。
しかし、事業として正式に立ち上げていない限り、小規模で終わることがほとんどなので、それほど気にされることはありません。
住宅ローンは、利用するとしてもほぼ1回か2回です。
成長性も関係ないので、この原則は特に影響しないものと考えていいでしょう。
しいて言うなら、他行で利用している引き落としなどをまとめてもらえるというメリットが考えられます。
投資用の不動産にはどちらのローンがいい?
投資用の不動産を購入するための資金として、どちらのローンを利用しようかと考える人は多いでしょう。
実は、その場合は迷うことなく、不動産投資用ローンを利用しなくてはいけません。
なぜかというと、住宅ローンは居住用不動産を購入するためのローンであり、投資用不動産の購入に使うのは契約事項に違反する可能性が高いからです。
不正利用が発覚した場合は、融資の一括返済を求められてしまうので、注意しましょう。
住宅ローンのほうが、金利も安いのでなるべくならそちらを選びたいと思うでしょう。
しかし、投資用の不動産を購入する場合は、先ほど説明した5つの原則に従ってリスクプレミアムを金利に上乗せすることとなるので、仕方がないのです。
ただし、居住していた不動産から引っ越す必要があり、やむを得ず賃貸にすることとなった場合などは、住宅ローンを利用していても問題ないことがあります。
その場合も、不正利用とみなされないように必ず銀行に相談しましょう。
今回の記事のポイントを整理!
今回の記事のポイントは以下になります。
- 銀行の融資基準には、5つの原則がある
- 不動産投資用ローンと、住宅ローンはその5つの原則それぞれで違いがある
- 投資用不動産には、必ず不動産投資用ローンを申し込まなければならない
しっかりと覚えておきましょう!