借地借家法に基づく借地契約には、増改築に関する内容が記載されていることがほとんどです。
増改築とは、建物の床面積を増やしたり、面積を変えずにリフォームしたりすることを指しますが、ここからは借地契約における増改築のルールについて、具体的に解説していきたいと思います。
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増改築に該当する工事について
まずは、増改築の定義について詳しく解説しましょう。
増改築は、増築と改築を組み合わせた言葉であり、それぞれ意味合いが異なります。
増築は、建物の床面積を増やすことであり、骨組みや構造から造り直すケースもあれば、敷地内に新たな構造物を造ったり、平屋を2階建てに変更したりする工事もこちらに該当します。
一方、改築とは、床面積を変えずに間取りの変更を伴う工事をすることをいいます。
建築基準法においては、“建築物の一部を除去または、建築物が災害によって一部焼失した後、引き続いてこれらと用途、規模、構造の著しく異ならない建築物を建てる工事”と定義されています。
法律上、借地での増改築は禁止されている?
皆さんの中には、借地借家法上、借地での増改築は禁止されていると考えている方もいるかもしれませんが、こちらの認識は正しくありません。
法律上の制限は、あくまで1992年以降に開始した借地が更新した後、つまり2022年になった後のものだけです。
つまり、法律上借地人は、自由に建物の増改築ができるというわけです。
ただし、冒頭でも触れたように、借地契約には、必ずと言って良いほど増改築に関する内容が記載されています。
ポイントは借地借家法ではなく、こちらの契約書に記載された内容です。
今でも、契約上増改築を制限、または禁止する条項(特約)が存在することは多く、借地人はこちらの影響を受けます。
言い換えると、借地における地主は、借地契約に増改築を制限もしくは禁止する旨を定めなければ、借地人の自由な増改築を拒否することができないというわけです。
増改築に関する誤解が招く借地人・地主の間違った行動
先ほど解説したように、法律上、借地における増改築が禁止されているわけではありませんので、契約内に増改築禁止特約が存在しなければ、借地人は借地条件の範囲内で増改築をすることができます。
また、制限を受けていない借地人は、本来以下のような行動も取る必要がありませんが、誤解によって行われることが多々あります。
- 地主に対し、増改築の承諾を得る
- 地主に増改築の承諾料を支払う
地主側からすれば、借地人から「増改築を認めてほしい」という要望があろうがなかろうが、契約に含まれていない以上、基本的には認める必要があります。
もちろん、承諾料を受け取ってはいけませんし、承諾のない増改築に対し、異議や解除を主張することに関しても、法律上間違った行動だと言えます。
地主が承諾料を受け取る特殊なケース
何度も言うように、契約書に特約が含まれている場合を除き、借地人は地主に承諾料を支払う必要がありません。
言い換えると、特約で増改築を禁止していない限り、地主は借地人から承諾料を受け取ってはいけないということです。
ただし、法律上必要ではないにもかかわらず、借地人が地主に対し承諾を得ようとしたり、承諾料を支払ったりする特殊なケースが存在します。
地主と借地人の関係が悪くなると、借地人は事実上ローンを受けることや、建物を売却するのが難しくなる可能性があります。
こちらは、地主様が増改築を認めてくれないことなどが主な理由です。
つまり、借地人は、法律的理論とはまったく関係なく、自身の不利益を回避するために、地主に承諾料を支払うケースがあるということです。
そのため、地主は増改築禁止特約の存在しない借地契約においても、承諾料を受け取れることが考えられます。
しかし、地主が正しい認識を持っていれば、借地人の承諾や承諾料は必要ないことがわかるため、このような承諾料の受け取りは、あまり好ましくないものだと考えておくべきです。
地主が受け取る承諾料の金額について
借地契約において、増改築禁止に関する特約が存在する場合、地主は借地人の増改築を認める対価として、承諾料を受け取ることができます。
このとき受け取れる承諾料の金額については、原則的に更地の3%相当額に設定されます。
ただし、特殊な事情がある場合、例外的に3%より高かったり、低かったりすることはあります。
例えば、過去の裁判例では、床面積が72%増加という、著しく規模の大きい増築が行われた場合に、更地の4.5%相当額の承諾料が設定されています。
また、平屋建てから2階建てに変更し、床面積が以前の2.83倍と大幅に増加したケースでは、更地の5%相当額の承諾料支払いが認められています。
このように、実際行われた増改築の内容によって、承諾料の金額は変動しますが、大体更地の2.5~7%の間に収まることが多いです。
裁判所が増改築を許可するケース
増改築禁止特約があるケースでは、地主が承諾しない限り、借地人の建物の活用は大きく制限されます。
また、このとき、裁判所が代わって許可をする制度が存在します。
正確には、現在の借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当である場合、地主に変わって裁判所が借地条件を変更するというものです。
条件変更や許可をするかどうかの判断基準は条文に規定されていて、通常は金銭(承諾料)の給付が条件となります。
また、このときに発生する承諾料の相場は、更地の10%相当額と、地主が直接増改築を許可する場合よりもかなり高めに設定されています。
ちなみに、こちらの裁判手続きについては、旧借地法と借地借家法の両方に規定されています。
つまり、地主が借地人の増改築を絶対に認めたくないと考えていても、借地人の手続き次第では、裁判所によって増改築が認められるケースがあるということです。
今回の記事のポイントを整理!
今回の記事のポイントは以下になります。
- 増改築は建物の床面積を増やす増築、面積を変えずに間取りを変更する改築を組み合わせた言葉
- 法律上、借地での増改築が禁止されているわけではない
- 借地契約の特約がない限り、地主は借地人から承諾料を受け取るべきではない
- 地主の代わりに、裁判所が増改築を許可するケースもある
以上のポイントはしっかりと頭にインプットしておきましょう!