不動産投資では、高齢者の方と賃貸借契約を結ぶこともあります。
例えば、持ち家を売却し、コンパクトな住居に住もうと考えている方などは、高齢になってから集合住宅に転居します。
今回は、高齢者の方に物件を貸し出す場合のリスク、契約書に記載しておきたい内容などについて解説します。
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高齢者に物件を貸し出す4つのリスク
高齢者の方に投資用不動産を貸し出す場合、オーナーは以下の4つのリスクがあることを理解しておきましょう。
- 安全上のリスク
- 設備上のリスク
- 死亡リスク
- 認知症リスク
安全上のリスク
単身の高齢者の方に対し、物件を貸し出す場合、安全上のリスクは非常に高くなります。
高齢者の方は、足腰がそれほど強くないため、浴室などで滑って転倒する可能性が高いです。
このとき、家族も同じ物件に居住していれば、ある程度迅速な対応ができるかもしれませんが、単身者の場合はそれが難しくなります。
設備上のリスク
高齢者の方が1人暮らしをする場合や、夫婦で生活する場合は、ある程度バリアフリー環境が整っていなければ、快適な生活が送れません。
そのため、通常通りの間取りで貸し出すと、入居者である高齢者の方から、「手すりを設置してほしい」といった要望が出る可能性もあります。
このような要望に対し、オーナーは必ずしも承諾しなければいけないわけではありませんが、拒否が原因で退去されてしまうことは十分に考えられます。
死亡リスク
高齢者の方に投資用不動産を貸し出す最大のリスクといえば、やはり死亡リスクでしょう。
先ほど、1人暮らしの方が浴室等で転倒した場合、対処が遅れるという話をしましたが、このとき頭部などを強打している場合は、そのまま誰にも発見されず、命を落とす可能性もあります。
また、なおも発見されずにいると、腐乱してしまい、投資用不動産が経済的な被害を受けてしまうことも考えられます。
認知症リスク
年齢を重ねるにつれて、認知症のリスクは徐々に高まっていきます。
入居者である高齢者の方が認知症を患ってしまうと、無意識に他の入居者に対して迷惑行為をしたり、直接オーナーに被害が及んだりすることもあります。
もちろん、これらの行為に関して、オーナーが直接的な責任を取る必要はありませんが、毎日のように対処しなければいけないことになると、負担はとても大きくなります。
高齢者と交わす賃貸借契約書に記載しておきたい内容
高齢者の方と賃貸借契約書を交わす場合、通常は盛り込まないような内容も記載しておく必要があります。
具体的には、以下のような内容を記載することで、ある程度リスクを軽減できます。
- 長期外出時の連絡義務
- 音信不通時の対応
- 疾患時の契約解除
- 長期入院時の契約解除
長期外出時の連絡義務
特に単身の高齢者の方と契約する場合、長期外出時の連絡義務については、必ず契約書に記載しておきましょう。
高齢者の方に物件を貸し出すリスクを低くするためには、少しでも早く異変に気付く必要があります。
よって、旅行などで数日間留守にする際には、前もってオーナーに連絡をするように義務づけましょう。
こちらの契約内容を記載すれば、部屋の電気が数日間消えていたとしても、異変があったわけではないということがわかります。
音信不通時の対応
こちらは、前述した“長期外出時の連絡義務”とセットで盛り込んでおきたい契約内容です。
具体的には、何らかの理由で、オーナーから入居者である高齢者の方に連絡をしたとき、連絡が付かなった場合に、開錠して室内をチェックすることを許可するというものです。
一見、高齢者の方のプライバシーが守られない契約内容のように聞こえますが、こちらは高齢者の方にとって非常に重要なことであるため、しっかり説明すれば理解してもらえる可能性が高いです。
また、室内のチェックには、警察を同行させることに関しても記載しておきましょう。
疾患時の契約解除
高齢者の方と交わす賃貸借契約書には、認知症など、特定の病気を患ったことが判明した場合に、賃貸借契約を解除する旨を記載しておきましょう。
特に、1人暮らしで認知症を患ってしまった高齢者の方は、判断能力が低く、他の入居者に迷惑をかける可能性もあるため、残念ながら、そのまま居住してもらうことは難しくなります。
ただし、契約解除の条項だけだと、病気を患った高齢者の方の行き場がなくなってしまいます。
そのため、前もって高齢者の方には、連帯保証人の他に、身元引受人もしくは身元保証人を用意してもらい、万が一のときにはそちらの人物に高齢者の方を引き取ってもらえるよう、準備しておきましょう。
具体的には、高齢者の方の子や孫と、身元引受に関する合意書、承諾書を交わしておくことをおすすめします。
長期入院時の契約解除
単身の高齢者の方が体調を崩したり、病気を患ったりしたことが原因で、長期入院を余儀なくされたとき、高齢者の方自ら契約解除をしなければならないという内容についても、賃貸借契約書には記載しておくべきです。
長期間人がいない状況になると、建物の劣化は進行しやすくなりますし、空き巣被害などのリスクも高まります。
こちらはオーナーにとって良いことではないため、前述の条項については必ず契約時に説明し、理解してもらいましょう。
契約時には家族に立ち会ってもらうべき
高齢者の方と賃貸借契約を結ぶ場合は、なるべくその子や孫といった家族の方に立ち会ってもらいましょう。
高齢者の方だけでは、どうしても契約内容について理解できない部分も出てくるでしょうし、後々「言った」「言わない」の争いが起こる可能性も高くなります。
特に、前述した追加条項の意味や目的などに関しては、時間をかけて説明し、高齢者の方とその家族の両方に理解してもらえるように努力しましょう。
今回の記事のポイントを整理!
今回の記事のポイントは以下になります。
- 高齢者の方は賃貸物件における安全上のリスクが高く、場合によっては死に至る危険性もある
- 認知症を患った高齢者の方は、他の入居者やオーナーに迷惑をかける可能性がある
- 音信不通時や疾患時の対応などは、必ず賃貸借契約書に記載するべき
- 高齢者の方との賃貸借契約は、その家族を交えて行うのが理想
以上のポイントはしっかりと頭にインプットしておきましょう!