不動産投資では、しばしば借地借家法に関する知識が必要になります。
もちろん、これらの知識は、オーナーとなる方が独自に学んで得なければいけないものであり、一朝一夕ではなかなか身に付きません。
ここからは、投資用不動産を買うなら知っておくべき借地借家法関連の知識を4つ解説したいと思います。
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借地借家法と“消費者契約法”の関係について
“消費者契約法”とは、消費者(個人)と事業者との間で締結される契約(消費契約)について、消費者の保護を図るための特例を定めた法律をいいます。
こちらの法律は、借地借家法との関係性も深く、貸主と借主の取引について適用されます。
つまり、投資用不動産を経営しているオーナーが“事業者”、借主が“消費者”に該当するということです。
また、消費者契約法では、事業者(オーナー)と消費者(借主)の契約について、以下の事由があった場合、消費者の契約取り消しを認めています。
- 重要事項について、事実と異なる内容を伝えた(ペット飼育禁止にも関わらず、飼っても良いと伝えた など)
- 将来の変動が不確実な事項について、断定的に判断した(1年後、間違いなく物件の隣で行われている工事は終了すると伝えた など)
- 重要事項について、消費者の不利益となる内容を行為に伝えなかった(暴力団関係者が同物件に居住していることを故意に伝えなかった など)
- 消費者の住居または消費者が業務を行っている場所から退去しない
- 事業者が勧誘している場所から消費者を退去させない(内見後、契約せずに帰ろうとする入居希望者を強引に引き止め、説得し、賃貸借契約を結ばせた など)
また、消費者契約法では、借地借家法に基づく賃貸借契約において、以下のような条項を無効とすることも定められています。
- ・賃料を滞納した場合、借主に対し年20%の遅延損害金の支払いを命じる条項 などこちらは、簡単にいうと、オーナーは借主に対し、過度な損害金の請求を行ってはいけないというルールです。
不動産投資をするにあたって、借地借家法について勉強するオーナーは、消費者契約法によって定められた前述のルールについても把握しておきましょう。
地震発生に伴う借主の死亡について
オーナーの投資用不動産において自身が発生し、もし借主が死亡してしまった場合、オーナーはどのような責任を負うのでしょうか?
こちらに関しては、借地借家法との関連性も深い民法において定められた、以下のルールを参考にすれば理解できます。
①投資用不動産に瑕疵があり、これによって第三者に損害が生じた場合、第一時的には借主が損害賠責任を負う
②借主が損害の発生を防止するために必要な注意をしていたときは、貸主が損害賠償責任を負う(この場合の貸主の責任は無過失責任である)
地震に伴って借主が死亡した場合、損害を被ったのは第三者ではなく借主ですから、借主にまったく落ち度がなく、なおかつ上記の②に該当する場合、オーナーは借主に対し無過失責任を負うことになります。
つまり、地震という自然災害による被害であっても、物件に瑕疵があれば、オーナーは借主に損害賠償をしなければいけないということです。
また、新築時からすでに瑕疵がある場合に限らず、新築時には瑕疵がなくても、その後の修繕や管理などを怠り、例えば10年経過した時点で、その物件が当然に持っているはずの性能を持っていなければ、こちらも瑕疵があると判断されてしまいます。
借家契約の正当事由について
オーナーが借家契約を終了させるためには、正当事由が必要です。
具体的には、以下の2つの要件をクリアする必要があります。
- 期間満了の1年~6ヶ月前までの間に、借主に対して契約を更新しない旨を通知すること
- 更新拒絶に正当な事由があること
借地借家法の正当事由があるかどうかに関しては、以下の要素を考慮して、最終的には裁判所が決定します。
- 貸主、借主が建物の使用を必要とする事情
- 建物の賃貸借に関する従前の経過
- 建物の利用状況
- 貸主からの立退料の申し出の有無、その額 など
中でも、もっとも判断の重要な要素となるのは①です。
①を簡単にいうと、貸主と借主のどちらが、土地を使う必要性が大きいかということを表しています。
借主が、他の物件に容易に移転できる場合は、正当事由も比較的容易に認められますが、逆に移転が難しい場合は、正当事由もなかなか認められません。
つまり、借主の方が土地を使う必要性が大きいと判断される場合です。
借主が死亡した場合の相続人への対応について
投資用不動産において借主が死亡し、その相続人が多数存在するとき、賃料の請求や未払いの場合の借家契約解除通知は、誰に対して行えば良いのでしょうか?
まず、オーナーは借主の相続人に対し、賃料を請求する権利があります。
しかも、各相続人に対し、賃料の全額請求が可能です。
よって、急に借主が亡くなったからといって、オーナーが大きな損失を負うことはないということです。
また、賃料の未払いがある場合は借家契約を解除できますが、解除の意思表示は、相続人の全員に対して行わなければいけません。
例えば、借主に配偶者と子ども2人がいる場合は、計3人に対して解除の意思表示を行います。
ただし、借主の相続人の間ですでに遺産分割が終了し、相続人の1人が借家権を相続することが決まった場合は、以後その相続人のみが賃料支払いの義務を負います。
他の相続人は、一切の支払い義務を負いません。
もちろん、賃料未払いの場合の借家契約解除の意思表示についても、オーナーはその相続人に対してだけ行えば良いことになります。
ちなみに、借家権の相続が1人に決まっているかどうかは、遺産分割協議書の内容を見れば確認できます。
今回の記事のポイントを整理!
今回の記事のポイントは以下になります。
- 借地借家法と消費者契約法は密接な関係にある
- 地震発生に伴って借主が死亡した場合、物件に瑕疵があれば、オーナーは無過失責任を負う
- 借家契約拒絶の正当事由は、借主が容易に移転できない場合には認められにくい
- 借主が死亡した場合、賃料や未払い分の請求、通知は相続人全員に行える(遺産分割協議前の場合)
以上のポイントはしっかりと頭にインプットしておきましょう!