借地借家法で定められた建物貸し出しの契約形態には、“一時使用目的賃貸借”と“定期借家契約”という2種類があります。
これらは似て非なるものであり、今後不動産投資をするという方は、違いやそれぞれの契約の特徴を知識として身に付けるべきです。
詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
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一時使用目的賃貸借について
借地借家法における借家は、基本的には一度貸し出すと、長期間貸主の元には返ってきません。
しかし、建物を所有する方の中には、「期間限定で貸し出したい」という方もいます。
例えば、「海外に赴任する半年間だけ自宅が空室になるから、友人に貸し出して賃料収入を得たい」といったケースです。
このケースのように、期間限定であることが明確な契約は“一時使用目的賃貸借”といい、借家扱いされません。
定期借家契約について
借地借家法の改正に伴い、新たに設けられたのが“定期借家契約”というものです。
これは、一定の方式に従った契約を行えば更新されないというものであり、次の要件を満たすことで締結できます。
- 契約期間を確定的に定めること
- 公正証書等による書面によって契約すること
- 貸主が借主に対し、契約の更新はなく、期間の満了とともに契約が終了することを、あらかじめ書面(契約書ではなもの)を交付して説明すること
ニュアンスとしては一時使用目的賃貸借に似ていますが、定期借家契約は極端に契約期間が短いとは限らず、契約の要件もより明確なものとなっています。
一時使用目的賃貸借の細かいルール
続いては、一時使用目的賃貸借についての細かいルールを見ていきましょう。
一時使用目的賃貸借かどうかの判断材料
賃貸借契約書のタイトル、条項などに“一時使用目的”と記載していたとしても、これが一時使用目的賃貸借に該当するかどうかは限りません。
該当するかどうかの判断材料としては、賃貸借の目的や動機、その他諸般の事情が挙げられます。
つまり、客観的に見て、短期間内に限り当該賃貸借契約を存続させる趣旨でないといけないということです。
一時使用目的賃貸借に当てはまる具体的な例
借地借家法改正前に施行されていた“借家法”には、一時使用目的の例が記載されていました。
具体的には、以下のようなものです。
- 転勤
- 療養
- 親族介護 など
借地借家法にこれらの記載はされていませんが、法改正されたからといって、上記が一時使用目的賃貸借に当てはまるというルールが消滅したわけではありません。
つまり、借地借家法においても、上記の理由で建物を貸し出す場合は、一時使用目的賃貸借に該当する可能性が高いということです。
また、オーナーが一定時期に当該物件に戻る予定があり、なおかつ借主が一定時期に従前の住居に戻る予定がある場合は、基本的に一時使用目的賃貸借の契約が成立します。
一時使用目的賃貸借と認められないケース
例えば、建物のオーナーが今後再築を計画していて、その工事を開始するまでの間、第三者に建物を貸し出すとします。
しかし、再築の計画が具体化していない場合、この賃貸借契約は一時使用目的賃貸借と認められない可能性が高いです。
その他にも、以下のようなケースでは、一時使用目的賃貸借が否定されます。
- 裁判所の和解調書、調停証書における、一時猶予の趣旨が明確ではない
- 賃貸借契約のタイトルが一時使用目的賃貸借となっているが、期間を限定する理由が明確ではない など
定期借家契約の細かいルール
次に、定期借家契約における細かいルールを見てみましょう。
定期借家契約は賃料が低いケースが多い
定期借家契約は、普通借家契約とは異なり、契約期間の満了で確実に契約を終了させることができます。
よって、オーナーが負うリスクは限定的であり、普通借家契約よりも賃料を低く設定するケースが多いです。
また、敷金や礼金などに関しては、一切発生しないこともあります。
更新はないものの、再契約は可能
定期借家契約は、基本的に更新が存在しませんが、期間満了時に貸主、借主の双方が再度契約を結び直し、結果的に延長するということはあります
ちなみに、これはあくまでも”同じ契約を延長した“という扱いではなく、”まったく異なる新たな契約を結んだ“ということになります。
定期借家契約の中途解約について
原則として、期間の定めがある建物賃貸借において、期間の途中で解約することは、特約(解約権留保特約)がない限り認められません。
しかし、定期借家契約の場合は例外で、特約がなくても借主が中途解約をすることができるルールがあります。
また、中途解約権が認められる要件は、以下の通りです。
- 建物の床面積が200㎡未満である
- 居住用の建物が目的物である
- 居住することが困難になった(転勤、療養、親族の介護など)
- 中途解約する旨を貸主に通知する(内容証明郵便が一般的)
中途解約権の強行法規性について
定期借家契約において、借主が持つ中途解約権には、強行法規性があります。
これは、貸主が特約により、中途解約権を排除したり、弱めたりすることができないことを意味しています。
例えば、貸主が以下のような内容の契約を結んだり、条件を付けたりすることは、借主が中途解約権を行使するにあたって不利になるため、認められていません。
- 解約申し入れ期間を1ヶ月よりも長期にする
- 違約金の支払いを解約条件とする など
サブリースと定期借家契約について
不動産投資では、専門業者に物件を一棟貸しして、管理を代行してもらう“サブリース”が実施されることがあります。
このとき、サブリース会社と定期借家契約を締結すれば、オーナーは契約期間終了後、より条件や対応の良い会社に乗り換えたり、サブリースの活用自体をやめたりすることができます。
また、契約期間中、サブリース賃料の見直しを行わない旨を特約で定めることも可能です。
ただし、契約期間中、オーナーからの中途解約は原則できません。
今回の記事のポイントを整理!
今回の記事のポイントは以下になります。
- 借地借家法における“一時使用目的賃貸借”と“定期借家契約”は似て非なるもの
- 短期間内に限り当該賃貸借契約を存続させる趣旨である場合、一時使用目的賃貸借と認められる
- 定期借家契約は、特約がなくても借主が中途解約をすることができる
- 不動産投資におけるサブリース契約は定期借家契約がおすすめ
以上のポイントはしっかりと頭にインプットしておきましょう!