投資用不動産で賃貸経営をするにあたって、とても重要な指標と言えば、なんと言っても“利回り”です。
これは、投資した金額に対して得られる見込み収益のことをいい、投資不動産には“表面利回り”と“実質利回り”の2つがあります。
今回は、これらの違いや計算方法などについて解説します。
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表面利回りについて
投資用不動産の運用によって得られると予想される年間の賃料収入の総額を、物件の価格で割り戻したものを“表面利回り”といいます。
“グロス利回り”と呼ばれることもあります。
不動産会社が物件の広告を行う場合は、この表面利回りが記載されていることが多く、以下の計算式で算出されます。
・年間賃料収入(想定)÷物件の購入価格
式を見てもらえればわかるように、これには投資用不動産の運営にかかるランニングコストが反映されていません。
文字通り、“表面的”な利回りというわけです。
ちなみに、投資用不動産を運営する場合には、以下のようなランニングコストがかかります。
- 税金(固定資産税、都市計画税、所得税)
- 管理費(PM業務にかかるもの、BM業務にかかるもの)
- 修繕費
- 共用部分の水道光熱費 など
・管理費(PM業務にかかるもの、BM業務にかかるもの)
・修繕費
・共用部分の水道光熱費 など
PM業務とは、入居者に関する業務、BM業務とは、建物に関する業務を指しています。
表面利回りのシミュレーション
例えば、以下の2つの投資用不動産があったとします。
- A.購入価格1,500万円、想定賃料月額70,000円
- B.購入価格4,000万円、想定賃料月額15万円
それぞれの表面利回りを計算してみましょう。
- A.70,000円×12ヶ月÷1,500万円=5.6%
- B.15万円×12ヶ月÷4,000万円=4.5%
これらを表面利回りだけで比較すると、一見大きな収益を得られそうな物件Bよりも、物件Aの方が高利回りだということがわかります。
表面利回りは何%くらいが理想か?
投資用不動産の表面利回りの理想は、物件の種類によって多少異なりますが、以下を上回っているのが良いとされています。
- 区分所有のマンション:3~4%(新築)、6%前後(中古)
- 一棟アパート:6%前後(新築)、8%前後(中古)
- 戸建て物件:8%前後(新築)、16%前後(中古)
実質利回りについて
一方、“実質利回り”は、年間の賃料収入から、前述のランニングコストを差し引いたものを、物件価格に購入時の諸経費を足したもので割った数字です。
“ネット利回り”とも呼ばれます。
計算式は以下の通りです。
・(想定年間賃料収入-諸経費)÷(物件の購入価格+購入時の諸経費)
こちらも名前の通り、さまざまな費用まで計算に入れた“実質的”な利回りを意味しています。
ちなみに、上記の“物件購入時の諸経費”には、主に以下のものが挙げられます。
- 不動産仲介手数料
- 登録免許税
- 印紙税
- 不動産取得税
- 司法書士報酬
- 売主からの清算金
- ローン事務手数料
- ローン保証料
- 団体信用生命保険料
- 各種損害保険料 など
実質利回りのシミュレーション
では、以下の2つの物件の実質利回りを比較してみましょう。
・A.購入価格1,500万円、想定賃料月額70,000円、管理費・修繕積立金月額35,000円、固定資産税50,000円、年間不動産仲介手数料12万円、購入時経費50万円
・B. 購入価格4,000万円、想定賃料月額15万円、管理費・修繕積立金月額20,000円、固定資産税90,000円、年間不動産仲介手数料60,000円、購入時経費100万円
それぞれの実質利回りを算出すると、以下のようになります。
・A.(70,000円×12ヶ月-35,000円×12ヶ月-50,000円-12万円)÷(1,500万円+50万円)=1.61%
・B. (15万円×12ヶ月-20,000円×12ヶ月-90,000円-60,000円)÷(4,000万円+100万円)=3.44%
先ほど、同じ購入価格、想定賃料月額の投資用不動産を表面利回りで比べた結果、物件Aの方が高利回りという結果になりましたが、今度は逆になっています。
また、どちらの方が信頼性は高いのかについては、やはり実質利回りで計算した方だと言えます。
利回りの高さ以外にチェックしておきたいポイント
投資用不動産の購入時は、表面利回りや実質利回りの高さを参考にするだけでなく、以下の点も注意して、物件を選択しなければいけません。
- 利回りは徐々に低下する
- 空室リスクの高さ
- 出口戦略の立てやすさ
それぞれ詳しく見てみましょう。
利回りは徐々に低下する
たとえ現時点で高利回りの投資用不動産であっても、その数字は基本的に時間の経過とともに低下していきます。
なぜなら、投資用不動産における賃料は、建物の劣化に伴い、少しずつ下がっていくからです。
また、毎月かかる管理費・修繕積立金などの金額は基本的に変わらず、場合によっては当初より上昇する可能性もあります。
そうなると、どんどん利回りは下がってしまいます。
これは前もって理解しておきましょう。
空室リスクの高さ
表面利回りや実質利回りは、基本的にその投資用不動産が常に満室であることを前提に弾き出されます。
ただ、永遠に満室を維持できる投資用不動産は基本的にはありません。
また、空室ができてしまうと、当初算出していた利回りを達成できなくなります。
そのため、投資用不動産を購入する際は、利回りの高さだけでなく、“空室リスクの高さ”についてもチェックしましょう。
例えば、賃貸需要の高いエリアにある物件は、空室リスクが低く、常に高い利回りを維持できます。
もちろん、これは低利回りであっても、安定したパフォーマンスを発揮してくれるということを指しています。
出口戦略の立てやすさ
出口戦略とは、投資用不動産の運営をリタイアする際の戦略をいい、主に売却のことを指しています。
例えば、高利回りの投資用不動産であっても、地方などのあまりニーズが高くない物件は買い手が付きにくく、決して出口戦略が立てやすいとは言えません。
また、このような投資用不動産は、売れ残れば売れ残るほど価値が下がりますし、所有し続ける間は税金などのランニングコストもかかります。
したがって、投資用不動産の購入時には、将来手放しやすいかどうかも考慮しなければいけません。
今回の記事のポイントを整理!
今回の記事のポイントは以下になります。
- 表面利回りの目安は物件の種類や築年数によって異なる
- 実質利回りは運営コスト、投資用不動産購入時の経費が反映されている
- 投資用不動産は利回りの高さだけでなく、空室リスクや出口戦略についても考慮して購入すべき
以上のポイントはしっかりと頭にインプットしておきましょう!