新型コロナウイルスの影響は、非常に大きなものとなっています。
特に、経済活動に対する影響は大きく、収入が大幅に減ったという人も少なくありません。不動産投資も例外ではありません。
この記事では、新型コロナウイルスが不動産投資に与えた影響について、データを用いて詳しく解説していきます。
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経済に与えた影響
新型コロナウイルスの流行は、経済全体に大きな影響を与えました。
不動産投資に与えた影響を考える前に、まずは全体的な影響から考えてみましょう。
経済面では、どのような影響があったのでしょうか?
インバウンド需要の大幅な減少
新型コロナウイルスの影響で、インバウンド市場には大きな変化が起こりました。
中国人観光客の爆買いで大いに注目を集め、それ以降も好調だったインバウンド市場ですが、新型コロナウイルスの影響で外国人観光客の入国が激減したことで、その市場は一気に縮小されたのです。
以下に、2020年1月~6月の訪日外国客数と、前年同月の人数について表で比較します。
訪日外国客数
2020年 | 2019年 | |
1月 | 2,661,022人 | 2,689,339人 |
2月 | 1,085,147人 | 2,604,322人 |
3月 | 193,658人 | 2,760,136人 |
4月 | 2,917人 | 2,926,685人 |
5月 | 1,700人 | 2,773,091人 |
6月 | 2,600人 | 2,880,041人 |
※参考:日本政府観光局(https://statistics.jnto.go.jp/graph/)
表で比較すると一目瞭然ですが、昨年と比較して2月から大幅に訪日客が減少しています。
昨年、最も訪日客が多かった4月は、緊急事態宣言の影響もあって1%以下に減り、5月はさらに減少しています。
その結果、観光客が訪れることを見込んでいたホテルや旅館などの宿泊業、およびそれに付随する物販などは大きなダメージを受けることとなりました。
そこには、不動産投資で注目されている民泊物件も含まれています。
国内消費の影響
特に大きく縮小したのはインバウンド事業ですが、国内向け市場も影響を受けていないわけではありません。
宿泊業の受けるダメージには、国内旅行の減少も含まれています。
常に人が集まっている、東京ディズニーランドをはじめとしたテーマパークも、相次いで営業を自粛しました。
また、外食なども控える人が増えたため、飲食業も売り上げが激減し、臨時休業や閉鎖する店舗も多数となりました。
そもそも、外出控えの影響で消費そのものがかなり落ち込んでしまいました。
子どもの学校が休校になったことで、仕事を休まざるを得ない人も多かったので、収入そのものが大幅に減った人もいます。
収入が減らなくても、将来的な不安から出費を抑えようとする人も増えました。
繁華街も、かなり大きな影響を受けました。キャバクラやホストクラブなど、不特定多数の顧客と密接な距離で接客する店舗は利用者が激減し、居酒屋など接客をしないところも外出自粛の影響で休業となるところも増えました。
2020年1月から5月までの、実収入と消費支出の前年からの変化をグラフにしました。
なお、このデータは勤労者世帯、2人以上の世帯のものです。
※参考:国内統計(https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/c19.html)
収入は一部の人が減少したものの、平均すると増加しています。
ちなみに、5月の大幅増は特別定額給付金によるものです。
それに対して、消費支出は大幅に落ち込んでいるのが分かります。
このように、コロナウイルスは経済全体に対しても非常に大きな影響を与えています。
そのことを踏まえた上で、不動産投資に対する影響について解説していきます。
不動産投資に与えた影響
不動産投資の多くは、物件を貸し出し家賃収入を得る賃貸用物件です。
そのため、オーナー様からの立場から最も気になるのは、賃貸の需要などでしょう。
まずは、その点から考えてみましょう。
居住用賃貸物件に対する影響は?
マンションやアパートなど、居住用の賃貸物件にはどのような影響が考えられるでしょうか?
結論から言ってしまうと、それほど大きな影響はありません。
なぜかというと、まず賃貸物件に住んでいる人が減るとしたら、その原因は次のいずれかになるからです。
それは、
1. 家を買う、あるいは新築する
2. 別の賃貸物件に引っ越す
3. 家賃を支払えず、家を失う
の3つがほとんどです。
ただし、このうち3.の家賃を支払えず家を失うというのは、かなり可能性が低いでしょう。
なぜなら、日本には生活保護があるので、家賃を支払えないほど困窮した場合はその制度を利用できるからです。
生活保護を受けると、家賃についても補助を受けられます。
そうなれば、2.の別の賃貸物件に引っ越すことはあっても、家そのものを失うようなことにはなりません。
そのため、当てはまる人はごく少数となるのです。
では、1.の家を買う、あるいは新築というのはどのくらい当てはまるのでしょうか?
まず、コロナウイルスが流行し始める直前、2019年10月に消費税増税がありました。その際、住宅の購入や新築を考えていた人の駆け込み需要があり、すでにひと段落しています。
また、コロナショックともいわれる現状を鑑みて、住宅ローンの返済に不安を抱く人も増えています。そのため、現在は家を買おうという人はそれほど多くないのです。
2.の、賃貸から賃貸へと引っ越すケースに関しては、そもそも心配する必要がありません。住む場所が変わるだけで、賃貸住宅の需要には何の変化もないからです。
また、今住んでいる人がわざわざ引っ越すという可能性も低いでしょう。なぜなら、今は外出を控える人が多いため、新居を探しに行くことも少なくなります。
また、出費を控えたいと考える人が多いため、費用のかかる引っ越しをすることも控えるでしょう。
テレワークの普及
通常なら、職場に近い物件でいいところがあれば、引っ越すという人も少なくありません。
しかし、今はそれも少ないでしょう。
なぜなら、テレワークを導入する企業が増えたからです。
東京都内の企業のテレワーク導入状況について、2019年と2020年4月のデータを比較すると、このようになります。
※東京都内の企業のテレワーク導入状況
2019年 | 2020年4月 | |
導入済み | 25.1% | 62.7% |
導入予定あり | 20.5% | 6.1% |
導入の予定はない | 53.7% | 31.2% |
※参考:日本テレワーク協会・東京都多様な働き方に関する実態調査 (https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/hatarakikata/telework/01_telework_tyousa.pdf)
※参考:東京都・テレワーク導入率緊急調査
(https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/05/12/documents/10.pdf)
2019年の時点では、導入する予定がなかった企業でも導入していることがわかります。
テレワークが導入されたことで、会社の近くに引っ越す意義はかなり少なくなりました。そのため、住み替えをする人も少なくなるのです。
需要の変動はあり得る
賃貸住宅を必要とする人は減らないのですが、その内訳については変動する可能性があります。
具体的には、これまでよりも家賃が高額な物件の需要は減り、やや安い物件の需要が高まることになると予想されます。
その背景には、コロナウイルスによる経済的な不安があります。
これまでより収入が減ってしまうと、今までと同じ家賃を支払い続けるのは難しくなることが予想されます。
また、何があるかわからない以上、家賃の安いところに引っ越してその差額を貯蓄に回したいという人もいるでしょう。
そのため、賃貸用の物件はこれまでよりも、低価格帯のものが人気となる可能性が高くなります。
投資をする際も、そのことを念頭に置いて物件を探してみてはいかがでしょうか。
不動産価格の低下
不動産の物件価格に関しては、コロナウイルスの影響を受けたことでこれまでよりも低下することが考えられます。
その理由について、考えてみましょう。
不動産の需要と供給
不動産価格を決定するのは、需要と供給のバランスです。
これまで取引された価格は、あくまでも参考価格でしかありません。
そのため、欲しがる人が増えた場合は不動産価格が上がり、売りたい人が増えれば不動産価格が下がります。
では、コロナウイルスの影響を受けたことで、不動産価格はどう変わるでしょうか?
コロナウイルスがなければ、今頃は東京オリンピックが開催されているはずでした。
そのことを見越して、不動産の価格が上がると考えていた人も多いでしょう。
しかし、延期になったことでその価格が上がることはありませんでした。資金に余裕がある人は、延期になったオリンピック開催まで1年、保有し続けるでしょう。
しかし、損切りをしたい人や資金に余裕がない人、もしくは先行きがわからないうちは投資を手控えたい人などは、今のうちに不動産を手放そうとします。
実際、弊社でもありがたいことに「物件価格が下がる前に売却を検討したい」というご相談を数多くいただきます。
そのため、現在は不動産を売りたい人が増えています。ということは、不動産を購入したいという需要よりも売却したいという需要の方が多いため不動産価格は下落傾向にあるのです。
また、オリンピックの開催が延期になったことも影響しているのかもしれません。
これから不動産投資を始める方にとっては必要な資金は、以前より少なく済むかもしれません。
事業用不動産への投資は?
居住用の不動産と、オフィスビルなどの事業用不動産では、若干事情が変わってきます。
事業用不動産への投資には、どのような影響が考えられるでしょうか?
その注意点などを、解説します。
特に影響が大きい飲食業
事業用不動産にも、様々な種類があります。
その中でも、特に気を付けたいのが飲食業などに貸し出すケースです。
コロナウイルスの影響が非常に大きいのが、飲食業なのです。
まず、2020年4月のデータから、飲食業がどのくらいコロナの影響を受けているのかを見てみましょう。
ここに、グラフでその影響を示します。
※参考:帝国データバンク・上場企業(外食産業)月次売上高動向調査(2020年4月分速報)(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p200509.pdf)
これを見てもわかるように、外食産業ではその多くが前年同月比で売り上げを落としています。
しかも、50%以上売上高が落ち込んだ企業が、80%近くを占めているのです。
一部、 売上高が上回ったという企業の多くは、テイクアウトに力を入れている企業です。
すぐに対応できなかったほとんどの企業は、かなり低迷することとなってしまいました。
規模の小さい個人の店舗などは、そのまま閉店することになったところも少なくありません。
不動産投資で、このような外食産業に店舗を貸し出していた場合、賃料の値下げ交渉などが行われたところも少なくないでしょう。
国土交通省でも、この状態を加味して家賃の減額に応じれば税の減免措置なども提案していましたが、賃料をそのままローンの返済に回している場合など、資金に余裕がなければ厳しいでしょう。
また、現在店舗が入っていない不動産では、新しい借り手を見つけるのが困難です。
状況次第では、そのまま徐々に競争力を失ってしまい、家賃の値下げをしなければ空き物件が長期化してしまうかもしれません。
このように、テナントなどは非常に厳しい状況といえるでしょう。
外出を控える動きがあるので、あまり関係のなさそうなアパレル関係なども売り上げが落ち込んでいるところが多く、どの業種でも厳しいものがあるのです。
オフィスビルなどの場合
一方、オフィスビルなどの場合はこのような心配もなく、無関係に見えるかもしれません。
確かに、現在のところ影響は少ないでしょうが、近い将来に変化する可能性は高いのです。
その変化について、考えてみましょう。
オフィスビルを利用している企業のうち、支店などの名目で入居している場合は注意が必要です。
なぜなら、現在は支店を減らして組織の再編成をする企業も増えているからです。
その背景には、売上高の減少とテレワークの普及があります。売上高が減少したことで、コスト削減を考えるのは当然です。
そして、テレワークが普及したことで、支店の必要性が薄れるのです。
ただし、いくらテレワークが増えたとしても、やはり支店や支社がないと困ることもあります。営業に回る仕事で、その拠点が必要な場合などです。
入居している会社をもう一度見直して、支店の必要性を確認しておいたほうがいいでしょう。
まとめ
コロナウイルスが、不動産投資にどのような影響を与えるのかを解説しました。
漠然と、何か不利になると思っていた人は多いでしょうが、こうやってひとつずつ確認していくことで具体的な問題点にも目が行くことでしょう。
これから不動産投資を始めるという人は、こういった点に注意して物件を選んでください。
物件の価格が下落気味なので、成功するチャンスはあるでしょう。
その反対に、既に物件を所有されているオーナー様は今後の市場価格の動向を注視していく必要があります。
以前とは異なった生活様式の中で少しでも不動産投資を良いとするようタイミングを見極めて売却をするようにしましょう。