借地借家法は、土地や建物の賃貸借契約などに関する事項を定めた法律です。
ただし、すべての土地や建物に対し、借地借家法のルールがそのまま適用されるとは限りません。
ここからは、借地借家法と“公営住宅”、そして“UR賃貸”の関係性について詳しく解説していきたいと思います。
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公営住宅とは?
公営住宅とは、国等の補助によって地方公共団体が建築し、低所得者向けに割安な賃料で貸し出される賃貸物件のことをいいます。
公営住宅には所得制限があり、住宅の規模や立地状況、収入による変動賃料を採用しているケースが多いです。
原則として、“現在同居しているまたは同居しようとする親族がいることや、一定の収入基準以下であることなどの条件”をクリアしなければ、公営住宅の申し込みはできません。
また、当該都道府県または市町村に在住・在勤していることなど、都道府県によって独自の入居基準が定められている場合もあります。
UR賃貸とは?
UR賃貸とは、独立行政法人都市再生機構が管理する賃貸物件で、全国に約75万戸存在します。
以前、都市再生機構が日本住宅公団という名称だった頃は、“公団住宅”と呼ばれていました。
現在UR賃貸に数えられる物件には、従来の公団住宅の他、最新設備を備えたハイスペック住宅も含まれます。
公営住宅は低所得者向けであることから、定められた水準以下の収入であることが申し込み条件であるのに対し、UR賃貸は原則として、一定の基準以上の収入があることが必要となります。
また、公営住宅は入居希望者が多いため、申し込みが抽選なることが多いですが、UR賃貸は先着順で決まることが多いため、希望する物件にすぐに入居できます。
借地借家法と公営住宅・UR賃貸の関係性
では、借地借家法と公営住宅・UR賃貸には、一体どのような関係性があるのでしょうか?
まず、公営住宅ですが、こちらは“借地借家法”と“公営住宅法”の2つが重複して関係しています。
具体的にいうと、以下のような関係性です。
- 公営住宅における貸主、借主の関係⇒借地借家法の“借家”に該当する
- 公営住宅における入居者、運営者間のルール⇒公営住宅法に規定されている
また、公営住宅には借地借家法が適用されるケースもありますが、あくまで優先されるのは公営住宅法です。
よって、考え方としては、公営住宅に関係するメインの法律が公営住宅法、サブの法律が借地借家法ということになります。
ちなみに、借地借家法と公営住宅法は、関係性のある法律同士です。
例えば、公営住宅法第3章第32条には、公営住宅の明け渡しに関する以下のような記載があります。
“事業主体は、公営住宅の借り上げに係る契約が終了する場合には、当該公営住宅の賃貸人に代わって、入居者に借地借家法第34条第1項の通知をすることができる”
この内容を見る限り、公営住宅法について詳しく知るためには、事前に借地借家法について知っておかなければいけないことがわかります。
一方、UR賃貸の関連法律には、“独立法人都市再生機構法”というものがあります。
こちらの第3章第4節には、賃貸住宅の管理に関することが定められていて、具体的には以下の項目で構成されています。
- 家賃の決定
- 賃貸住宅の建て替えの実施等
- 仮住居の提供
- 新たに建設される賃貸住宅への入居
- 公営住宅への入居
- 説明会の開催等
- 移転料の支払い
- 建て替えに係る家賃の特例
こちらがUR賃貸におけるメインの法律ですが、公営住宅と同じく、貸主と借主の関係については、建物を対価と引き換えに貸し出されている場合、借家に該当するため、借地借家法が全面的に適用されることになります。
その理由としては、前述の独立法人都市再生機構法の中には、運営者・入居者間のルールが定められていないことが挙げられます。
まとめると、公営住宅・UR賃貸における関連法律は以下のようになります。
- 公営住宅:借地借家法、公営住宅法
- UR賃貸:借地借家法、独立法人都市再生機構法
借地借家法が適用される具体的なケース
公営住宅やUR賃貸において、借地借家法が適用される具体的なケースとしては、主に“借主保護の規定”が挙げられます。
建物賃貸借を貸主側から終了させるアクションには、正当事由が必要になります。
正当事由とは、貸主が賃貸借契約の解約を申し入れるための必要な条件をいい、こちらがない場合、貸主から一方的に解約することはできません。
こちらが、借地借家法における借主保護の規定です。
ちなみに、何が正当事由となるかについては、裁判での判断に委ねられていて、多数の判例がありますが、規定の趣旨に照らせば、借主に有利になる傾向があるのは当然です。
基本的には、貸主・借主が土地・建物の使用を必要とする事情、賃貸借に関する従前の経緯、土地・建物の利用状況、立退料の提供などを考慮して判断するとされています。
中でも、もっとも比重が大きいのは“建物の使用の必要性”であり、自己使用の必要性は特に重視されます。
貸主の必要性が大幅に上回っているケースとしては、以下のような例が挙げられます。
- 貸主⇒高齢、1人暮らし
- 借主⇒他にも住居を保有している
一方、以下のような例は、借主の必要性が上回っているケースに該当します。
- 貸主⇒建物に入居しなくても、支障・困難は生じない
- 借主⇒長年にわたり、借家で家業を行っていた
その他、貸主と借主、双方における建物使用の必要性に、ほとんど差がないというケースもあります。
具体的には以下のようなケースです。
- 貸主:持病あり、現在の住居が家族6人にしては手狭
- 借主:生活状況が苦しい、借家で事業を継続する必要がある
上記のようなケースは、建物使用の必要性で判断することが難しいため、当然別の要素が考慮されます。
具体的には、明け渡し料の提供によって判断されるケースが多いです。
これらのルールは、公営住宅やUR賃貸でも適用されるものであり、非常に重要なことです。
今回の記事のポイントを整理!
今回の記事のポイントは以下になります。
- 公営住宅は、地方公共団体が建築し、低所得者向けに割安な賃料で貸し出される物件
- UR賃貸は、かつて公団住宅という名称で提供されていた賃貸物件
- 公営住宅は借地借家法と公営住宅法、UR賃貸は借地借家法と独立法人都市再生機構法が重複して関係する
- 公営住宅やUR賃貸では、借地借家法における借主保護の規定が適用される
以上のポイントはしっかりと頭にインプットしておきましょう!