“定期借家契約”は、借地借家法に基づき、契約期間満了によって賃貸借関係が終了する借家契約です。
不動産投資におけるサブリースでは、こちらの形態でサブリース会社と契約することが望ましく、オーナーとなる方は概要を理解しておかなければいけません。
今回は、定期借家契約の流れや活用法などについて解説します。
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定期借家契約締結の流れ
定期借家契約の締結は、一般的に以下のような流れで行われます。
- 定期借家契約である旨を伝える
- 重要事項説明をする
- 書面で契約する
定期借家契約である旨を伝える
定期借家契約を契約する場合、貸主は借主に対し、“当契約は更新がなく、期間満了によって終了する”という旨について、契約書とは別に書面を交付して説明しなければいけません。
“契約書とは別に”というところがポイントのため、覚えておきましょう。
重要事項説明をする
定期借家契約を交わすにあたって、宅地建物取引業者(不動産会社)が仲介する場合は、借主に対して重要事項説明が行われます。
こちらの内容には、先ほど解説した“契約の更新がない”という旨も含まれます。
つまり、貸主からの説明と、不動産会社からの説明が別途行われるということです。
書面で契約する
普通借家契約の場合、書面による契約だけでなく、口頭による契約も認められています。
一方、定期借家契約の契約方法は、公正証書等の書面による契約に限るため、必ず作成しなければいけません。
また、こちらの契約書では、再契約できることを明記し、再契約した場合の契約関係(原状回復債務、敷金の清算等)についても整理しておかなければいけません。
その他、連帯保証人の債務の範囲の明確化等も規定し、トラブルが起こらないようにしておきましょう。
契約開始から期間満了までの流れについて
定期借家契約がスタートし、期間が満了するまでの一般的については、以下のようになります。
- 契約終了の通知をする
- 再契約について協議する
契約終了の通知をする
定期借家契約の期間が1年以上である場合、貸主は借主に対し、期間満了の1年~6ヶ月前までの間に、“期間の満了により賃貸借契約が終了する”という旨を通知しなければいけません。
ちなみに、床面積が200㎡未満の居住用建物については、借主が転勤や療養、あるいは親族の介護など、やむを得ない事情により、建物を生活の本拠として使用することが困難になった場合、借主から中途解約の申し入れをすることができます。
そして、申し入れがあった日から1ヶ月後に、定期借家契約は終了します。
再契約について協議する
定期借家契約の期間が満了すると、基本的には更新されることがなく、そのまま終了します。
ただし、貸主と借主双方が合意する場合は、再契約することも可能です。
よって、双方は契約が終了するまでの間に、再契約について協議しなければいけません。
ちなみに、再契約によって締結された新たな定期借家契約は、前回の定期借家契約を引き継いでいるわけではなく、まったく別の契約として扱われます。
定期借家契約の主な活用法
定期借家契約は、不動産投資におけるサブリース契約だけでなく、他にもさまざまなシーンで活用できます。
具体的な活用法としては、以下が挙げられます。
- 投資用不動産の建て替え時に活用する
- 投資用不動産の大規模修繕時に活用する
- 転勤時の留守宅を賃貸する際に活用する
- 高齢者世帯の住み替え時に活用する
投資用不動産の建て替え時に活用する
投資用不動産の建て替えを検討している貸主は、普通借家契約を締結すると、正当事由がない限り解約が認められず、明け渡しが進まないことを懸念して、空室があるにも関わらず入居者募集を控えることがあります。
一方、定期借家契約を活用すれば、建て替え時期までの短期間であっても入居者を募集することができ、空室の有効活用が可能になります。
投資用不動産の大規模修繕時に活用する
投資用不動産を長期間安定的に経営するためには、日々のメンテナンスとあわせて、市場の需要にマッチしたリフォーム、大規模修繕などを実施しなければいけません。
ただ、入居者がいる状態では、なかなか大規模修繕が進まないことも考えられます。
具体的には、手順の複雑化や経費の増大などが懸念されます。
また、万が一の事故により、入居者に被害が及ぶ可能性も否めません。
そんなとき、定期借家契約を活用すれば、入居者が入れ替わる時期に合わせて、短期間に集中的な大規模修繕を実施することができます。
転勤時の留守宅を賃貸する際に活用する
急な転勤が決定した場合、住居を所有する方は、どのように処理するかについて迷うでしょう。
人生でもっとも大きい買い物と言われる不動産を、簡単に手放すわけにはいきません。
しかし、ずっと空室のまま所有していると、老朽化が著しく進んでしまいます。
また、住宅ローンを返済している最中の場合、ローン返済と転勤先での住居費を二重で負担しなければいけません。
このようなケースでも、定期借家契約は活用できます。
定期借家契約の場合、契約期間が満了すれば、確定的に賃貸借契約が終了するため、貸主は思惑通りの時期に、確実に住居に戻ることができます。
高齢者世帯の住み替え時に活用する
子どもが独り立ちし、高齢者の両親のみの世帯となると、住居の清掃や管理の負担が大きくなります。
このような場合に、定期借家契約を活用すれば、効率的な住み替えを実現できます。
具体的には、郊外の一戸建てから都心部の集合住宅などに転居する場合などに、一戸建てを定期借家契約で貸し出すことで、新居における住居費を得ながら生活することが可能です。
また、定期借家契約は期間が満了すれば終了するため、その後は住み慣れた土地に再び戻ってくることもできます。
今回の記事のポイントを整理!
今回の記事のポイントは以下になります。
- 定期借家契約締結時は、必ず契約書を作成し、借主に対して定期借家契約であることを別の書面で伝えなければいけない
- 定期借家契約期間満了の旨は、期間満了の1年~6ヶ月前までの間に借主に通知しなければいけない
- 定期借家契約は再契約が可能
- 定期借家契約は投資用不動産の建て替え時や大規模修繕時などにも活用できる
以上のポイントはしっかりとインプットしておきましょう!